今回は、日本人の英語力を規定する要因とその変化から、日本人の英語力について書いてみます。
ベースとなるのは、JGSS(日本版総合的社会調査Japanese General Social Surveys)という総合的社会調査プロジェクトの小磯かをる氏の一連の論文です。
JGSSのデータをもとに日本人の英語能力を分析していらっしゃいます。
2015年の論文では、2002年度のデータと2010年度のデータが比較されています。
この2015年論文をもとに、小磯氏のデータ分析を紹介していきますね。
英語力の規定要因
結婚:「未婚」vs「既婚」
まずは、「結婚」という要因です。
男性の場合、この変数による差異は2002年、2010年ともに見られませんでした。
一方、女性の場合、2002年のデータでは、未婚の方が英語力が高いという傾向が見られました。
しかし、2010年の調査の結果を見る限り、結婚しているかどうかは、女性の英語職に影響力を持たなくなっているとのことです。
職業:「管理職or研究職」vs「一般事務職」
2002年のデータによると、男女ともに、管理職や研究職である方が一般事務職よりも英語力が高いという分析結果でした。
しかし、2010年のデータをみると、管理職や研究職であるということの影響力は弱まったとのことです。
以前は、主に管理職や研究職の人が英語を使う傾向にあったということですね。
現在は変化しましたよね。
そういう人たちだけが英語に接する時代ではなくなりました。
小磯氏は、職業による差異が減少したのは、近年は一般事務職の者も仕事で英語を使用する機会が増えているためであろうと分析されています。
年齢層
男性の場合は、2002年より2010年の方が年齢層の影響が低くなっています。
女性の場合、2002年よりも2010年の方が年齢層の影響力が高くなっているとのことです。
2010年度データでは、20代~40代の女性の英語力が他の年齢層の女性よりかなり高くなっています。
居住地域の人口規模:「都会」vs「田舎」
2002年度のデータでは、大都市に住んでいるものは町村に住む者より英語力が高いという結果がでています。
2010年度では、居住地域の人口規模の影響力は見られないとのことです。
高等教育:「高学歴」or「not」
高等教育を受けたかどうかの影響力は男女との弱くなっているとのことです。
世帯収入:「リッチ」or「プア」
一方で、男女とも世帯収入の影響が強くなったとのことです。
早期英語教育
早期英語教育の経験者は英語力が高いとのことです。
要するに
以上の結果をまとめてみましょう。
総合的社会調査プロジェクト2002年度と2010年度との比較から、
2002年から2010年への変化というのは、
- 結婚しているかしていないかは、女性の英語力と特に関係がなくなった
- 管理職ないし研究職であるかどうかも大きな要因ではなくなった
- 40代以降で下降傾向が見られ、女性の場合それが男性より顕著
- 居住地はネックにならなくなった
- 学歴の影響力は弱まった
- 世帯収入の影響が強くなった
- 早期英語教育を受けた人は英語力が高め
こんな感じです。
6.(生まれ育った家庭の世帯収入)と7.(早期英語教育の有無)については、大人になった個人が今から変えようもないので、ひとまず1.~5.に注目します。
これら1.~5.までの5つの項目から言えるのは、
- 結婚しているかどうかは問題ではない
- 現在の職業もあまり関係ない
- 30-50代の間では大きな差異はない
- 都会か田舎かはあまり関係ない
- 学歴と完全には比例しない
ということです。
もちろんざっくりした捉え方ですよ。
でも、広範囲の調査にもとづいたデータから読み取れる現在の日本人の英語力の現状です。
結婚の有無、現在の職業、30ー50代くらいでは大きな差はない、地方に住んでいる、学歴が高くないというのは、言い訳にはならないのです。
もちろん、関係なくはないですよ。個別の事情にもよります。
しかし、数年前よりこれらの要因の影響力は減退していることはデータが証明しているのです。
このサイトの読者像と時代の変化
このサイトをご覧の方は、おそらく男性も女性もいらっしゃって、結婚している方もしていない方もいらっしゃることでしょう。
仕事や日常生活で英語を使う必要があったり、英語を使うライフスタイルを志向されていることと思います。
読者の年齢は、20代から50代あたりを管理人は想定しています。
繰り返しますが、
- 結婚しているかどうかは問題ではない
- 現在の職業もあまり関係ない
- 少なくとも30-50代は年齢による大きな差はない(20代は未知数)
- 都会か田舎かはあまり関係ない
- 学歴と完全には比例しない
のです。
ですから、これらの要因を持ち出して、英語ができない、やっても仕方ない!なんて言い訳にはなりません(笑)
さらに、英語を必要としている、あるいは英語を使うライフスタイルを志向している20-50代であり、かつ現在英語力が不足していると感じている人、大人になってから英語をやり直そうと考えている人というのは、
- 生まれた家の世帯収入はそれほど高くなかった
- 早期英語教育を受けていない
という人たちでしょう。
英語力の規定要因として「世帯年収」と「早期英語教育」の影響力が大きいことは、小磯氏も論文のの中で述べておられます。
これらについては、本人の意思ではどうにもできません。
過去を変えることはできませんから。
しかし、
2010年以降、さらに英語教育・英語学習のあり方はさらに大きく変化しています。
オンラインでの会話学習や動画やさまざまなアプリなどの登場です。
これらを活用するかしないかによる英語力の格差というのは、2010年の調査以降、大きくなっていると予想されます。
この社会調査は8年おきに実施され、今2019年なので2018年の調査結果と分析を待たなければなりません。
しかし、この新たなインパクトは、現在あらゆる世代に及んでいるものと想像されます。
新しいツールとメソッドを使おう
ともかく、時代は変わりました。
急速な変化です。
英語学習の環境も大きく変わりました。
以前はネイティブの音声に触れること自体難しかったり、音声教材は高価でした。
しかし、今では無料です!
テクノロジーの進歩だけでなく、語学習得のためのメソッドも進化しています。
現状の変化に伴い、バイリンガリズムに関するアカデミックな研究も進んできています。
ですから、英語に挫折した過去を持つ大人も、もう一度あらためて、今の英語学習環境で英語の勉強をやり直してみる価値があります。
きっと以前とは結果が違ってくるはずです。
- やるかやらないか
- 効果的なやり方か否か
そういう格差の方が、今後大きくなってくるのではないでしょうか。
当サイトでは、そのための優良情報を紹介していきたいと思います。