#4 京大 宮沢孝幸先生のウイルス学講義がわかりやすい

出典:【Youtube】京大 おどろきのウイルス学講義【第1弾】|宮沢孝幸(京都大学 ウイルス・再生医科学研究所)|PHP新書 PHP研究所

できればぜひ動画をご覧になってみてください。
ウイルスについて知識のない一般人でも理解できるようにわかりやすく解説してくださっています。

以下、まとめ+一部文字起こししたものです。

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新興ウイルス感染症はありふれている

今回の新型コロナウイルス感染症は世界中に一気に広まって大きな問題になりましたが、実はこうした新興ウィルス感染症は毎年数個ずつ人に現れてきているのだそうです。
宮沢先生によると、こうした新興ウイルス感染症はこれからも(動物から)人にやってくるし、新興ウイルス感染症を完全になくすということはできない、とのことです。

人間のまわりにいる動物(家畜、ペット、野生動物)が常にウイルスを持っており、そのウイルスは元の宿主にとどまらず、変異をしていくうちに他の動物にも(人にも)感染するようになっていく。

これからも動物にウイルスが存在するかぎり人にやってくることは避けられない

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「予測ウイルス学」の提唱

今後どのウイルスが人の社会にやってくるかは予測しがたいのが実情だが、それを予測し対策が打てるようにしようと考えた研究者もいらっしゃるそうです。
”予測ウイルス学” 京都大学ウイルス研究所の所長だった日沼賴夫氏によるウイルス学会での提言
(2003)

実際にはこの分野の研究は進んでいないのが実情。しかし、今どんどんウイルスの解析技術が進歩しているので、予測ウイルス学というのも現実的にできる段階になってきているとのことです。

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動物から人へ

多くの人が感染している麻疹ウイルスはもともとは1000年以上前にウシのウイルスが人に感染して、それが人にアダプト(適応)して広がって今も人間界で広がり、病気を起こしているということがわかっているそうです。
麻疹ウイルスについては、現在はワクチンによって制御されているとのことです。
ウシにも近いウイルスがあって、その”牛疫ウイルス”についてはワクチンによって完全に制圧され、この世界にいなくなったそうです。

今後、ワクチンプログラムが進んだ場合に、麻疹のウイルスが人類から根絶される可能性はある。

しかし、麻疹のウイルスがこの世から根絶されたとしても、次にくるウイルスが待ち構えている。

そして、それはおそらく”イヌジステンパーウイルス”だろうと考えられている。

麻疹のウイルスと”イヌジステンパーウイルス”は遺伝的にとても近いが、今は麻疹のワクチンを売った人や麻疹にかかって回復した人は”麻疹に対する免疫”を持っている。その免疫によってイヌのウイルスが来るのが抑えられている。

しかし、麻疹のウイルスがこの世から根絶された場合、そして麻疹の免疫が人の世界でだんだんなくなっていった場合、次にイヌのウイルスがやってくるだろうと言われています。

もともと、イヌジステンパーウイルス、イヌのモルビリウイルスはイヌだけ、あるいは食肉目(ネコ科動物)に感染するようになっていたが、十数年前から霊長類にも感染するようになってきています。

国立感染症研究所の研究によると、わずかな変異によって、食肉目だけにしか感染しなかったウイルスが霊長類にも感染するようになったことがわかっています。

今は、人には感染していないが、麻疹がなくなると”新しい麻疹のウイルス”になると考えられています。

ネコの”パルボウイルス”というのも紹介されています。
ネコだけではなく、1978年にイヌに感染して世界に広まっていたそうです(イヌパルボウイルス)。
もとは野生動物おそらくキツネあたりかららやってきたと考えられているそうです。
イヌのパルボウイルスはネコにも感染するようになって、はじめは発展途上国で、のちには先進国においても、イヌのパルボウイルスがネコに蔓延していることがわかってきたのだそうです。
イヌ・ネコではパルボウイルスは行き来をしているということがわかったのだが、10年ほど前に、中国のサル施設でサルがたくさん死んだことがあり、調査の結果、原因はネコのパルボウイルス、霊長類にも感染し致死性であったことがわかったのだそうです。

霊長類にも感染するということであれば、人にも感染する可能性がある、となれば「そのウイルスは危ないんじゃないか?」ということで研究を開始することができて、予測ウイルス学につながっていくということになる。

そんなふうに話されています。

野生動物から直接人へ

サルが亡くなると人も危ないんじゃないかということで研究を開始できるー
しかし、新興ウイルス感染症は野生動物から直接人に急にくることがあるのだそうです。

新型コロナウイルスもそうで、中国、アジアに生息していたキクガシラコウモリから感染したと疑われているそうです。

しかしはっきりとは分かっておらず、もうひとつ、コウモリから別の動物に感染してそこで組み換え、進化が起こって人に感染するようになったとも考えられているそうです。

いずれにしても出どころはコウモリ。
ですが、

コウモリはおそらくそのウイルスで病気を起こしていない、ウイルスを持っていても平気なわけなのだが、そういうものが遺伝的に変化したり、組み換えを起こして新しい宿主に感染するようになってそこで病気を起こすようになったというのが、今回の新型コロナウイルス、前回のSARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス。

そして、「新興ウイルス感染症というのはこういう例の方が多い」のだそうです。

急に野生動物、家畜から人にやってくる。
しかし、その動物においては病気を起こしていないので研究の対象にならない(なってこなかった)のだそうです。

しかし、新興ウイルス感染症を予測する上では病気を起こさないウイルスも網羅的に研究する必要がある

今回皆さんも分かったように、新興ウイルス感染症は大きな被害を及ぼします。次にどういうウイルスがやってくるか?を常に考えて先回りしていかなきゃいけない

そんなふうにおっしゃっています。

くわしくは先生のこちらの書籍で↓↓↓